いろいろな人が関わる保育の良さ 0歳児の担当制について【園長の保育雑談】

月に1度、入園希望の方を対象に園見学を行っています。ある時見学者からこんな質問がありました。
「赤ちゃんは、担当の先生が見てくれますか?」
というものです。

「担当の先生」とは、「担任」という意味ではなく
「ある特定の保育者だけが責任をもって決まった子どもの面倒をみてくれますか?」
という意味での質問でした。

保護者の皆さんは、どのようにお考えでしょうか。当園では0歳児に決まった担当を置くという考え方をとっていません。

家庭では、お母さんだけが子育てを担当するわけではありません。お父さんはもちろんのこと、時にはおばあちゃんやおじいちゃんも含めて、赤ちゃんの面倒をみます。赤ちゃんは、例えば遊びたければお父さん、眠い時にはお母さんというように、その時々の気持ちに応じて自分にとって心地よい大人の存在を選びとっていきます。

人間の赤ちゃんは、かなり早い時期から非常に優れた能力を持つということがわかってきています。生後6か月から10か月ぐらいには、自分に意地悪な人よりも親切な人を選ぶ力があると証明された実験があります。つまり、自分のことをよく知っていて、親切に関わってくれる(温かく応答的に、気持ちを受け止めてくれる)複数の大人を選べる環境が大切なのです。

赤ちゃんは大人の接し方の違いを早いうちから認識したうえで、誰と関わるのかを選択しています。私たちが思っている以上に赤ちゃんは柔軟性を持っているようです。

園でも「決まった先生だけが関わる担当制」ではなくて、赤ちゃんが自分のその時々の気持ちに応じてどの先生に関わるのかを選べるように複数の保育者を配置しています。

実際に保育の中でも、眠い時にはA先生、遊ぶ時にはB先生と柔軟に選ぶ姿が見られます。面倒を見る機会が少ない担任以外の先生に対しても、赤ちゃんがすーっと心を許して落ち着くことすらあります。

さらには、赤ちゃんが大人を選べる環境にあることは、赤ちゃんのその後の育ちにプラスの影響を与えると考えています。ややオーバーですが、人類の進化の過程を考えても、子どもが決まった大人に育てられたケースは少ないと思います。アフリカには「子どもを育てるには村中の人が必要だ」ということわざがあるくらいです。

親子だけではなく、兄弟姉妹の間で面倒を見たり見られたりもしたはずです。親戚のおじさんやおばさん、いとことの関わりや、近所のおじさん、おばさん、年上や年下の子どもたちとの関わりも当たり前のようにあったことでしょう。つまり子どもは、多様な人たちとの強い関わりの中で、人と関わる力や自己主張の仕方、問題解決能力などの社会性を身につけていくのだと思います。

子ども園でもいろいろな大人が赤ちゃんに親切に関わること、異年齢の子どもを含めた子ども同士の関わりがあること、そうした多様な人間関係の中で育っていくことが非常に大切なのだと考えています。

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