乳幼児期の子どもは、「運動」が大好きです。これは「食事」や「睡眠」と並ぶ、誰もが生まれながらにして持っている欲求です。ただし、大人がイメージするスポーツのような感覚ではなく、「ただ身体を動かしたい」という気持ちをもっているようです。
子どもはこうした気持ちから身体を動かしますが、それは同時に子どもの身体的な発達、運動能力を促すことになります。
そして、子どもたちに特に運動能力を育てようと思ったなら、特定のスポーツにこだわる必要はありません。
スポーツでは、例えばサッカーなら【蹴る・走る】といった特定の動きを繰り返すことになりますが、それよりもむしろ乳幼児期にはいろいろな種類の身体の動きを経験することが大切であるといわれています。
さて、こうした子どもの運動面の発達は、ケガの予防とも密接に関わってきます。例えば、 子どもが戸外で遊んでいて転んだ時に、「手が先に出ない」ケガについて話題になることがあります。転倒時、とっさに手が先に出ないために、おでこをけがしてしまったり、あごをすってしまったりすることがあります。
以前子どもの運動面を専門にする大学の先生の話を聴く機会があったのですが、こうしたケガの背景には、赤ちゃんの頃に“ハイハイ”の体験が少なかったり、歩く経験自体が少なかったりすることを挙げていました。
早く歩くようになってほしいと親が願うあまり、十分に“ハイハイ”をさせなかったり、歩けるのに抱っこをしている時間が多かったりすることで、手足を一緒に動かすことを習得できない可能性があるとのことでした。
子どもは、小さなころから“ハイハイ”をしたり、よちよち歩いたりすることで、手足を協調させて動かすことができるようになります。ハイハイや歩行は、手足の筋力だけではなく、お腹の周り、足やお尻、背中の筋力など、体全体を支える力を高めてくれます。逆に、こうした体験が少ないと、大きくなってからのケガにもつながるということです
ちなみに当園では、こうした知見も参考にしながら子どもの遊ぶ環境に工夫を凝らしています。例えば、週に一度のサーキット運動では、多様な動きを遊びの中に組み込んで経験できるようにしています。また、1Fランチルームの裏にあるボルダリングやネットは、子どもの体幹やバランス感覚を獲得していくことをねらいとしています。 バランス感覚を養うことは、こんな効果があると考えられています。
- 総合的な運動能力や三半規管の向上、身体を安定させる力や姿勢保持
- 身体を自分の意思でコントロールする力や瞬発力、危険を回避する力の向上
- 精神的なバランス、心の安定を保てるようになり、ストレスや不安の軽減に貢献
身体を動かす遊びには、小さなケガはつきものですが、一方で大きな事故やケガを予防する力はネット遊びのような多様な身体の動きからしか獲得できません。遊びを通して運動能力を育成していくことは、危険を回避する力を獲得していくためにも、非常に大切なことなのです。
年末・年始とお休みに入りますが、ぜひ屋外で積極的に身体を動かして遊ぶことをお薦めします。本年もお世話になりました。良いお年をお迎えください。【園長 福島 正晃】