10月になると、すぐに運動会があります。当園では2歳児クラス以上での実施となりますが、今回改めて運動会について考えたいと思います。みなさんは運動会の目的については、どのようにお考えでしょうか?
園では、運動会をきっかけとして子どもたちに体力をつけてほしいということがあります。ただし、1回きりの「運動会」があるから体力が向上するわけではありません。
むしろ、日常的な戸外遊びや毎週行っているサーキット運動あそび、園にあるネットやボルダリング、屋上にあるボックス遊具や雲梯等々の遊びによって、子どもの運動能力は向上していきます。運動会は、あくまで子どもたちの現時点での運動能力・身体的な成長を披露する場です。そのため、日常生活や遊びの延長線上として、内容も組み立てています。
さらに、運動会で育つのは、体力面だけではありません。友達と協力したり競い合ったりすることで、社会性や協調性を育むことにもつながります。また、競技を通じて達成感や満足感を味わうことも重要です。また、大勢の前でいろいろなことを披露するので、「恥ずかしさ」を乗り越える経験にもなります。
年長クラスのたいよう組では毎年バルーン演技を行います。子どもたちはこの演技に対して大きな期待を持って挑んでいます。前年度のたいよう組の子どもたちが行ったバルーンの技をよく覚えており「自分たちもやってみたい」という思いを抱いて挑戦しています。
バルーンのポイントは、一人では決してできないものであること。友だちと動きを調和させ、音楽に合わせてリズムを取り、全員の動きが一体となった時に、初めて達成感や満足感が生まれます。ただこれは5~6歳の子どもたち約20人の集団にとっては、簡単なことではありません。
だからこそ、そこに至るまでには「できないことができるようになっていく」過程が必ずあります。大切なのは「できるようになりたいけど、今ひとつうまくできない」という状態を何度も体験し、そこから「うまくできないけど、少しずつうまくできるようになってきた」ことをみんなで経験をしていくことです。
また、練習を積み重ねていくなかで、「○○くんのようにうまくやりたい、○○ちゃんが失敗しないようにフォローする」など友だちを意識することもあるでしょう。だからと言って、自分が頑張るだけではどうしようもないという経験もします。担任の先生は、そんな子どもたちの葛藤に寄り添って、より上手くなっていくにはどうしたらよいのかを、一緒に考え励まし、相談してきました。
ここには少しオーバーですが、自分は周りを生かしながら、そして自分は周りに生かされながら、気がついたらこれまでの自分たちの力以上のものを生み出している・・・、バルーンを通じて子どもたちはそんな体験をしている気がします。その意味で「自分の殻を破る」体験をしていると言えないでしょうか。
これはバルーンに限ったことではありません。子どもたちがやりたいと思って参加し、友だち同士で真剣に向き合って共鳴し合う体験には、今までの自分を乗り越えた成長が隠れていると感じています。私たちが子どもたちなりの“一挙手一投足”の表現の魅力に取りつかれ、その姿に感動し、目が離せなくなるのはそのためだと思います。
さて、今年はどんな姿が見られるのでしょうか、今から楽しみです。