突然ですが……、小学校2年生の算数には、こんな文章題が出てきます。
子どもが15人並んでいます。たろうさんの前には7人います。たろうさんのうしろには何人いますか?
この問題は、2年生の子どもたちにとって「難問」として知られています。でもなぜ、子どもたちはこの問題に手こずるのでしょうか?
一番の理由は、子どもたちが「並んでいる」状況を具体的にイメージするのが難しいからだと言われています。
子どもたちが一列に同じ方向を向いて並んでいて、その並びの方向が「前」であること。そして、たろうさんの前に7人がいて、さらにたろうさんの「うしろ」にも子どもたちがいて、その人数が問われていることを理解できないと、この問題は解けません。
さらに、イメージしにくい理由として挙げられるのが「前」や「うしろ」といった言葉です。子ども園でも日常的に「〇〇ちゃんのうしろに並んでくれる?」とか「〇〇ちゃんの前だよ」といった会話がよく使われます。しかし、実はこれらの言葉は、大人が考えるほど簡単ではありません。
なぜなら、先生から見た「前」が子どもから見ると「うしろ」だったり、子どもから見た「前」が先生から見ると「うしろ」だったりするからです。どこを基準にするかによって、その意味合いは変わってしまいます。つまり「前」や「うしろ」といった空間や位置を表す言葉は、相対的な思考を必要とするため難しいのです。
また、「前」や「うしろ」という言葉は、並ぶ場面だけでなく、子どもに時間を伝える場面でも頻繁に使われます。「(長い針が)9(の前)までに終わりにするよ」とか「12(のうしろ)になったら、〇〇の部屋に行くよ」などです。並んでいるときの「前」と「うしろ」は目に見えますが、時間は目に見えません。それでも、私たちは同じ言葉を使っています。
だとすると、子どもたちはこれらの言葉をどうやって理解していくのでしょうか?
結局のところ、ここで重要になるのは、「前」や「うしろ」といった抽象的な言葉を、具体的なイメージに落とし込んで理解する力です。そのためには、子どもの頃から、日常生活に結びついた具体的なイメージができる言葉をたくさん使う機会があることが大事になります。
この意味で、乳幼児期の遊びや生活体験はとても重要な役割を果たしていると言えるでしょう。
例えば、積み木やブロック遊びをしていれば、「上」や「下」、「前」や「うしろ」といった空間を表す言葉を使う機会が自然と生まれます。子どもたちに人気の「だるまさんがころんだ」は、「前」に動いたり「うしろ」に逃げたりすることを楽しむ遊びです。
生活の場面でも、「かばんの下の引き出しから服を取り出す(着替え)」、「お皿の上に自分の食べたお皿をのせる(食事)」、「便座の上にお尻をのせる(排泄)」など、位置関係を表す言葉は日常的に使われます。
こう考えると、小学校以降で学ぶ文章や言葉をスムーズに理解するためには、乳幼児期に遊びや生活の中で多様な経験を積み、感覚的に言葉の意味を捉える機会を豊富に持つことが不可欠であると言えるでしょう。
これらの経験の積み重ねは、子どもたちが複雑な概念を理解するための土台を築き、将来の学習能力にも大きく左右する、そんなふうに考えています。