当園では夏休み期間中に、毎年小学生がお手伝い保育に来てくれます。今年も小学生が延べ79名ほど、参加してくれました。小学生と園の子どもたちの関わりを見ていると、つくづく「子どもは子どもの中で育つ」ということを実感します。
ともすると私たちは小学校以降の学年(同年齢)をベースにした、クラス単位の集団を当たり前のものとして考えがちです。
しかし、学校は教科を中心として学ぶ場であることから学年の区切りを設けているのに対して、乳幼児教育施設は、学校よりも長い時間、遊びや生活を中心にして子どもの成長を支えていく場所です。子どもが人間関係の幅を広げ豊かに成長していくには、同年齢ばかりでの集団では、もったいない気がしています。
そういうこともあって、当園では夏休み期間中だけでも卒園児の小学生を招いて、ふだん関わりのないお兄さん・お姉さんと関わる機会をつくっています。
そもそも、同年齢ではなく異年齢の子ども同士で生活することによって、年長者・年少者それぞれにこんな良いところがあると考えています。
1、年少者にとっての長所
- 自分の少し先の成長に見通しが持てる=成長への期待感がもてる
- 年上の子の行動やあそびに刺激を受け、強い憧れをもつ
- 子どもの発達はマネすることで促されるが、その真似する身近なモデルとする
実際に小学生と関わる中で、こんな子どもの姿が見られました。
- プールで顔をつけている姿を見て、自分も水に顔をつけようとマネをしていた。
- 水遊びをダイナミックに遊ぶなど、とにかく小学生のマネをしたい。
- 食事への切り替えの場面で、先生だと嫌がる子どもでも、小学生だと手をつないで行こうとする。
- お昼寝の時、先生が寝かせようとしても寝ないが、小学生だと落ち着いて布団に入っていった。
- 小学生のトイレにまで、子どもたちはついていこうとしていた。
2、年長者にとっての長所
- 小さい子のお手本となることで、自信をつけることができる
- 自分の行動や言動をしっかりしたものにしようとする意識が働く
- 年長児が年少児に教えてあげることで、事柄の理解が深まる
- 年少児に合わせた行動や言動が、思いやりや寛容な気持ちを育む
小学生にも次のような姿がありました。
- 「これ読みたいの?」と子どもに確認してから、絵本を読んであげていた
- 作った玩具を子どもに壊されても、「全然いいよ」とやさしく接してくれた
- ままごとで子どもから食べ物を渡されると、「ありがとう」と言って食べるマネをしてくれていた
- 子ども同士のけんかに気づいて、自分の遊びを中断して、その場で仲裁してくれていた
園の子どもたちも小学生も、共にふだん関わりのない人と関わることで、きっと憧れややさしさ、柔軟さや相手の気持ちに気づく力をほんの少し育むことができたのではないかと思います。そして何より楽しいと感じてくれたなら、今後のお互いの人生にとって価値ある体験になったのではないかと感じています。