「感じる」体験が、「表現力」や「創造性」を育んでいく

端午の節句が近づくと、毎年西戸山公園には、何十匹ものこいのぼりが飾られます。先月、子どもたちとその様子を見にいってきました。たくさんのこいのぼりが風に揺られている姿を見て、子どもたちは歓声を上げて、喜んでいました。

また、この時期の子どもたちは、ダンゴムシに夢中です。地面にある大きな石やプランターをどかしてみると、そこにはダンゴムシがいて、これを発見した時の子どもたちは本当に興奮しています。足がたくさんあるからなのか、歩き方なのか、小さな身体がまるくなるからなのか、とにかく子どもたちは興味津々です。幼児クラスでは、4月からダンゴムシを飼ってますし、5月には実物のダンゴムシや写真を観察しながら、絵を描きました。最近まで展示してありましたが、足や触覚、模様、色などをよく観察して、子どもたちなりの表現がそこにはありました。

ここに見られるのは、子どもたちの「感じる」体験が、「表現や創造」へとつながっていく過程です。今日AIをはじめとする情報技術の進展により、「人間らしさ」とは何なのかということが議論されていますが、その一つが「感じる」ことだと考えられています。

実際に、たくさん泳ぐこいのぼりを見て歓声を上げたり、ダンゴムシを見てワクワクしたりと、五感を使って「感じる」体験は「人間らしさ」の証と言えるでしょう。これはAIにはできません。

そもそも子どもの「表現」は、五感を働かせて「感じる」ことから始まります。例えば初めてクレヨンを手にした1歳児は、たまたまクレヨンを握った手を動かしてみたら紙に色がつき、さらに手を動かしてみたらもっと色が塗られることを発見します。自分の手の動きで、何か色が生み出されることは、初めてクレヨンを持った子どもにとっては、きっと不思議で感動的な体験でしょう。

描画以外にも、2歳児ぐらいになるとはさみで紙が「切れる」こと、糊で紙が「くっつく」ことなどは、そのこと自体がおもしろく、楽しい体験です。他にも砂場あそびでは、さらさらと砂の感触を楽しんだり、自由に形をつくったり、五感を働かせながら楽しむ体験が得られます。さらに水が加わると、砂の感触に変化が生まれ、泥遊びや水をためて川や池をつくったりして遊びに広がりが生まれます。

こんなふうに「感じる」ことと「表現する」「創る」ことは、切り離すことができません。だとしたら、乳幼児期の「人間らしさ」を探求するには、次のことが大切になってくると思います。

  • 五感を通じて「感じる」遊びをたくさん体験すること。
  • 楽しいことをだれかと共有し、共感を得ること。
  • 表現する手段が身近にあること。

子どもが「感じた」ことや、これを何かの手段で「表現」した時に、大人は「不思議だね」「おもしろい」「工夫したね」などと、子どもの思いに素直に共感すること。これが、子どもの意欲・やる気の原動力になります。

また、子どもが表現したいと思ったときに、多種多様な素材や道具が用意してあることも重要となってきます。

園では、子どもたちの「感性」や「表現力・創造性」育んでいくために、以上のような環境を大事にしていきたいと思います。

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