「遊び」で育つ、目に見えない力

保護者の皆さんは子ども園に、どんなイメージをもっていますか? きっと多くの方は、子どもたちが遊んでいる場とか、生活の場、と思っているのではないでしょうか。

「遊び」というと、大人からすると「娯楽」のような、仕事や日常から逃れた解放的なイメージがあるかもしれませんが、子どもにとって「遊び」はとても重要で、実は「学び」の場でもあります。

例えばうちの園に、カプラという木製積み木があります。子どもたちはこれを高く積んで、建物を作っていくことがあります。幼児でも、身長ぐらいに積んでいくには、相当な時間と集中力を要します。ちょっとでもずれたら、一気に崩れてしまうので、一個一個丁寧に積み重ねていきます。自分のやってみたいことを目標にして、それに向けて粘り強く取り組み、自分なりに工夫する姿がここにあります。

ここには認知的な能力と非認知的な能力の両方が関わっているといわれています。認知的な能力とは、主に数を計算する、文字を読むなどの試験で測れる能力をさします。簡単にいうと「勉強」とか、「学力」のイメージですね。

一方、非認知的な能力とは、好奇心や意欲、やり抜く力、共感性、楽観性、などのように、テストでは測れないけれど大切な力、いわば心の部分をさします。

先ほどの積み木の例で言えば、認知的な能力とは積み木の大きさや重さを考えて、積み木がはみ出さないように積んでいく、この時に使う思考のことです。しかし、積み木を崩れないよう高く作っていくには、思考力だけでなく、同時に粘り強さとか根気強さのような、頑張る力が要求されます。この頑張るとか、向き合うといった力が、非認知的能力といわれるものです。

遊びの重要性は、実はこの「非認知的能力」を育てることにあります。ただ遊んでいるように見えても、そこには粘り強く取り組む姿勢や、好奇心をもって物事に挑戦する姿があったりします。だから園では、子どものこういった姿をたくさん引き出したいのですが、それには「友だちからの影響」が大きいと感じます。

そもそも「やりたい」や「楽しいそう」という興味や好奇心が生まれるきっかけは、友だちのおもしろそうな遊びを見ているからです。その意味で同年齢だけでなく異年齢でふだんから生活している園環境は大事なのです。刺激や影響を受けるお友達が、年齢の幅を超えてそこかしこにいるからです。

実際に今年度うちの園では、何人もの年長さんがマフラー編みを根気強く取り組む姿が見られました。子どもたちに聞くと、年中のころからマフラーづくりを憧れの目で見ていて、興味をふくらませていたようです。また、けん玉をひたすら練習する子どもたちの姿が見られましたが粘り強く取り組むことができたのも、友だちからの好影響があったからこそでしょう。

園で大切にしていることは、遊びを通して、認知的な能力と非認知的な能力の両面を、バランスよく成長していけるようにしていくことです。二つの能力は両輪で、例えば文字や数などの認知的な力を、子どもの興味が育たない前に早くから教え込むことはあまり意味がありません。

ちなみに認知的な能力のもっとも中核をなすのが、「考える力」と言われますが、これを支えているのは子どもの興味や好奇心であり、友だちからの強い刺激・影響なのです。今年度も、友だちとの関わりを大切にしながら、遊びを通じて子どもたちの二つの能力を伸ばしていくこと、このことを肝に銘じて保育を楽しんでいきたいと思います。

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