毎日の子どもとの生活の中で、私たち保育者が大切にしている関わりの一つに「問いかける」ということがあります。
例えば子どもがケガをして、事務所(医務室)に来ることがよくあります。そんな時にも「○○ちゃん、どうした?」とやさしく聞いてあげます。
たいていの子は痛い箇所を指して「ここ(が痛い)」と言ったりします。その後も「そこがどうしたの?」と聞いて、子どもに(どうしてケガをしたのか)その状況説明を求め、ケガの原因を子どもなりに説明してもらうようにしています。
注意しているのは、大人が子どもの言いたいことをできるだけ先取りしないようにすること。その上で「どうしたらケガしなかっただろうね?」などと問いかけを続けて、子どもに何が問題だったのかを振り返ってもらいます。子どもがケガの原因を自分で言葉にすることで、「○○が問題だった」と子どもなりに決めることを大事にしています。
遊びの場面でも外で遊ぶのか、室内で遊ぶのかを選択してもらうことがよくあります。12月中旬に予定している「大きくなった会」の役においても、子どもが自ら選んで決めていると思います。
また毎日の食事においても、食べる分量を「いっぱい」か「少し」なのかを自分で決めてもらうようにしています。こうした関わりは、もちろん「子どもが自ら考え行動する」という園の保育目標を実現していくためですが、同時に子どもに「自分で決めていく習慣をつくる」ことを大切にしてほしいからです。
大人になるにつれて、私たちは自分で何かを選ばなければならない、決めなくてはいけない場面に多く直面します。
その時に自分のやりたいことをしっかりと選択できるようになるためには、子どものうちから「自分の意思で選んで決める」トレーニングをしておくべきだと考えています。
そうでなければ高校や大学、就職先などを選ぶにしても「どこかに正解があるのではないか」「親や先生など誰かが正解を教えてくれるのでは」と思い込んで、自分で決められない子どもになってしまう気がします。
少し話が大きくなりますが、先日イーロン・マスクについて語っている動画を見ました。イーロン・マスクといえば、電気自動車事業のテスラ・モーターズ、ロケット事業や太陽光事業など、複数の世界的な企業を立て続けに創業してきた、いわば天才起業家です。
動画の中ではイーロン・マスクのすごさについて、「自分で何かを選んで決める」という能力に注目していました。その動画では、どんな偉大なプロジェクトでもそれを一つひとつ推し進めていくには、様々なことに迷いながらも、最終的には決断していく力(決める力)が必要だと強調していました。
イーロン・マスクですら、突然「決める力」が身についたわけではないでしょう。そこには、小さいころからの「自分で何かを選んで決める」という習慣の積み重ねがあったはずです。
だからこそ大切なのは、大人の思いを押し付けるのではなく、「子ども自身に選択させること」、そして「やさしく問いかけること」。この習慣づくりと積み重ねが子どもの「決める力」を育んでいき、自らの人生を切り拓く原動力を育むのではないか、そう考えています。