保育園・子ども園と小学校はどうちがう?

保育園・子ども園は、保護者の方が就労等の理由で子どもを見ることができない間に、子どもを安心して預けることができる場所です。しかしこれは制度としての説明なので、今回は保育園や子ども園は、そもそも何が大事にされている場なのかを説明します。

まずは、小学校との違いを考えてみます。小学校は、国が定めるガイドラインに基づいて、算数、国語などの教科を学年ごとに学んでいきます。何年生までに覚えるべき漢字や算数の計算など、「できるようにする」目標がきっちりと決まっています。

一方、保育園・子ども園には運営ガイドラインである「保育所保育指針」というのがあります。(短いながらも、なかなかよいことが書いてあるので、一度ぜひ読んでみてください)

ここには、到達目標ではなく、「こんなことが大事です」という、大まかな方向性だけが示されています。

例えば、小学校での算数に相当する「数量や図形」についての項目では「遊びや生活の中で、数や図形、文字などに親しむ体験を重ねて、興味や関心・感覚を育てる」という意味のことが挙げられています。なんだか漠然としていますね。

これは、保育園・子ども園の時期は、「できる・できない」はひとまず置いておいて、育ってほしい方向性を意識しながら、教育してほしいということなのです。

また、保育園はベビーシッターとも異なります。ベビーシッターは、大人1人が1~2人ぐらいの子どもを見るのに対して、保育園や子ども園では少なくとも10人以上の集団として子どもが生活しています。そこには集団としての生活ルールがあり、人間関係の中でも「仲良し」だけでなく、ときにはケンカやいざこざ、叱られることなども経験していきます。

こうした特徴を考えると、保育園や子ども園は、「大人や子どもの人間関係を基本にして、子どもの自立を育んでいく場」だと思います。

例えばしずく組で、鉄棒にぶら下がって自慢げにしているお友だちの姿を見て自分もやってみる。何とかやり遂げようとする子どもの姿には、すでに自立に向けての芽生えが見られます。

自立の第一歩は、子どもが自らの力で思いつくことを「やってみたい!」から始まりますし、周りの人の姿をみて「やってみたい!」という気持ちが引き出されるのです。

このように、自立は「一人で何でもしようとする」ことだけではありません。友だちと関わる中で、気持ちを交わしながら一緒に活動し、育っていくものなのです。

気持ちが通じる経験を重ねると、徐々に親しい関係となっていきます。お互いがわかり合って、お互いの素敵さを感じて、「一緒だ、仲良しだ」という感覚を共にして遊ぶうちに、一緒に実現したいことが生まれてきて、それを工夫して実現しようとします。

つまり、仲良し関係から協同して何かに取り組む関係へと変化・成長していくのです。そこには、感情、知性、社会性がお互いに影響しながら育ち合うサイクルが生まれていくのです。

「できる・できない」はひとまず置いておき、集団での人間関係から育つことを意識しながら、子どもがやってみようと思う気持ちを、いかに引き出していくか。そして、そんな保育環境をどうやってつくり、発展させていけるか。

私たちの園だけでなく、多くの保育園・子ども園ではそんなことを大切に考えているのではないでしょうか。(園長 福島 正晃)

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