2歳児が発揮した「ニュートラルな関わり方」

先日にじ組(2歳児クラス)では、二人の女の子がおままごと遊びをしていました。一人の子は、お友だちが使っていた道具を使いたかったのでしょう。

ちょっと借りようとしました。するとお友だちは「私が使っているんだから!」と言わんばかりに、道具をぎゅっと握って放しません……。貸してくれないと分かった女の子は、大きな声で泣き始めました。

しばらく泣いていると……、お部屋からお友だちが集まってきて、泣いている女の子の頭をなでていきます。

にじ組では、お友だちとのモノの貸し借りから、どちらかが泣く場面がしばしばあるからなのか、泣いている子どもへの関わり方がみんな絶妙で、本当に「なでていく」のです。少し頭をなでると、また自分の遊びに戻っていきます。

頭をなでていく子どもたちの姿は、まるで「どうしたの? 貸してもらえなかったの? ちょっと待てば貸してもらえるよ」と言っているかのようです。

実際に近くにいた保育者は、「貸してもらえなかったのね〜、○○ちゃん、まだ使いたいんだって!ちょっと待ってみようか?」と穏やかに声をかけていました。

保育者の関わりが、子どもにとってモデルになっているんだなと感じました。

この子たちの関わりの絶妙さとは、一体なんでしょうか? 2歳児ぐらいのこの時期の子どもは、ちょうど”我″が強く出てきて、関わる際の距離感が難しくなります。

泣いている気持ちに寄り添いすぎると、本人もお友だちが貸してくれなかった、その落胆の気持ちに入り込んでしまい、そこから抜け出すのが難しくなってしまいます。

だからといって寄り添わなければ、大声で泣いて自分で気持ちを収めるどころではなくなってしまいます。最悪、人への基本的な信頼感が弱くなってしまうこともあり、放っておくのはやめた方がよいでしょう。

今回にじ組の子どもたちは、泣いているお友達に「だいじょうぶだよ」とやさしく頭をなでて接してはいるけど、相手の気持ちに入り込みすぎない関わりができていました。

いわばニュートラルな関わりを子どもたちが自然とやっていたことに、感心しました。ニュートラルな関わりとは、「目の前に起こっている現象には肯定も否定もしないが、でもあなたの気持ちは受け止めたよ」というメッセージを伝え、相手の存在を肯定することです。

子どもへの関わりというと、「励ましや称賛」など前向きな関わりがとかく注目されがちで、もちろん、場面によってはそれも大切ではあるのです。

しかし、今回のような子ども自身の気持ちを調節したり、自分自身で納得してもらうような場面においては、ニュートラルな関わりが効果を発揮するのです。

「否定も肯定もしないけど、あなたの気持ちはちゃんと受け止めているよ」というメッセージを発することが、子どもが自分の行いを振りかえったり、気持ちをクールダウンしたりすることを可能にします。

ご家庭でも、子どもの気持ちを立て直す際には参考にしてみてはいかがでしょうか。

(園長 福島 正晃)

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