子どもの手は口ほどにものをいう!?子どもの手の発達と心の成長

子どもの手は、でたらめな動きから、徐々に食具を口に持っていくような制御ができるようになり、3歳くらいの頃には手をうまく動かしながら服の脱ぎ着ができるようになるまでに成長します。

「眼は口ほどにものを言う」ではありませんが、言葉がまだ十分に使えない子どもにとって、「手は口ほどにものを言う」気がします。つまり子どもの手には、心が表現されていると感じることがあります。

例えば、指差しをする手、抱っこを求めて差しのべる手、パチパチと拍手する手、バイバイと振る手、ハイタッチをする手、泣いている子の頭をなでなでする手、イヤイヤと振りのける手、大人や友だちとつなぐ手…と、手にもいろいろあります。

そういえば園では、手をつなぐことがよくあります。「お散歩に行きます! 二列に並んで手をつないで〜、はい、出発します」
先生に促されることもあれば、自分から好きな友だちと手をつなぐこともあります。

お散歩で手をつなぐことにも、育ちの面では意味があります

お友だちと手をつなぐというのは、相手の存在を認め、相手の気持ちを尊重しようとする心の芽生えがある気がします。手をつないで、反対方向に歩くことはできません。当然どちらかが相手の希望にそうように自分の身体の動きや手の力を加減しなくてはなりません。

ここには相手に合わせて自分の気持ちの折り合いをつける、自己抑制の気持ちが働いていると思います。もちろん、自分の希望を相手に伝えようとする努力も見られ、そこには止まったり引っぱったりと身体を通した会話が成立しています。その意味で手をつないで、相手に合わせながら同じ方向に歩くことは、協調性の表われと言えるのではないでしょうか。

園では散歩に限らず、例えば食事をするときには「いただきますをしーましょ!、おててを出してハーイ!、おててはおひざ!」と言って、手を合わせて食べ始めます。あるいは子どもたちを静かにさせて、気持ちを切り替えさせたり集中させたりする必要がある時には、「はじまるよ!」「三匹のこぶた」などの手遊びをしながら、手をそのままひざの上に持って行きます。

園の先生たちのすごいところは、子どもの手を落ち着かせることが気持ちを鎮めるということを知っていることです。

食事の場面でも「手」をつかうことの育ちが見られます

ちなみに生まれてから1年間ぐらい、赤ちゃんは、ひたすら物に触れ、いじりまわし、口に持っていってなめて、また手に取ることを繰り返し行います。手をつかって物に触れることで、指や手の動き、力の加減を学習していきます。

しかしそうした手や指の動かし方の学習以上に大切なのは、手を通して子どもなりに世界を一つひとつ理解し、確認していく過程があるということです。子どもは、手を使い手を通して、きっと世界を感じとっているにちがいありません。

さて、今月は「大きくなった会」があります。子どもたちが歌や踊り、劇あそびをして楽しみます。そこには言葉だけでなく、子どもたちの身振りや手振りで表現するものも多く見られます。「手の動きは、子どもの心とつながっている」、そんなことを思いながら身体表現を観覧してみると、子どもの新しい一面を垣間見ることができるかもしれません。当日が楽しみです。
(園長 福島 正晃)

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