教育とは、子どもの「好き」を見つけ伸ばしてあげること

先日職員会議で、3歳以上児クラスの先生たちが、子どもたちと生き物の関わりについて発表し、職員で勉強し合いました。現在園にはカメや金魚、ザリガニ、青虫、カブトムシ(卵)など、たくさんの生き物がいます。子どもがこうした生き物に対してどんな反応をしていたのかを、先生たちが話してくれました。子どもは……

カブトムシに熱中する子どもたち

「カブトムシの羽はどうなっているの?」
「足がどうしてギザギザでチクチクするの?」
「カブトムシが土の中にもぐったけど、どうして?」
「あおむしが青色から茶色になって動かなくなった……なんで?」
「(脱皮した様子を見て)ザリガニが増えている!どうして?」

また廃材でカブトムシ用のお家をつくりながら、「坂道は登れるの?」、「おしっこをしちゃった…トイレを作らないと」、「自分の部屋は?」などと、想像を膨らませていました。

ところで、子どもの「疑問」や「興味」は、「同じ」と「違う」に気が付くことから広がっていきます。「カブトムシは自分と同じ生き物なはずなのに、どうして足が違うの?」、「猫と犬はどうして食べるモノが違うの?」「生き物が卵から生まれるなら、自分も卵から生まれたのかな?」などなど。こうした疑問から子どもの頃に、昆虫用のゼリーや飼い猫(犬)の餌をこっそり味見した人は少なくないと思っています(私もその一人ですが……)。

ただ、子どもの好奇心や興味は、まだ漠然としていて、実際に何が好きなのかははっきりしていません。例えば中高生ぐらいになると、ゲームをやっていても「勝つための戦略を考えるのが好き」、「ゲーム音楽が好き」、あるいは「キャラづくりや衣装替えが好き」、「踊りなどの身体の動き」など、だんだん自分の好みがどこにあるのかがはっきりしてきます。

しかし、子どもの頃の好奇心は、大人のように整理されたものではありません。カブトムシを見ていても、「飼い育て成長を見るのが楽しみなのか」、「図鑑を見ていろいろな情報を見るのが好きなのか」、あるいは「足や角など体のつくりに興味があるのか」、子ども自身でもよくわからないことが多いのです。

その意味では、乳幼児期は、いろいろなことを初めて体験する中から、自分が好きなことに出会っていく自分探しの時期でもあります。
そこで大人として大切なのは、子どもの「驚き」や「不思議さ」、「疑問」からわき出てくる好奇心や探求心に、その都度一緒に共感し合いながら伸ばしてあげることではないでしょうか。

教科書に書いてある内容を丸暗記したり、先生が子どもたちに向かって教えてくれるのが教育だと思い込みがちです。しかし、学びはそこに「おもしろさ」や「不思議さ」、「自分なりの興味」がなければ持続しません。

いつの時代でも、学びが起こるきっかけは、「どうして?」や「なぜ?」という驚きや問いなのです。ライト兄弟が世界で初めて有人飛行を成功させたのも、「どうして鳥やトンボは空を飛べるのに、人間は飛べないのか?」という疑問からだと言われています。

子どもの「好き」を学びとつなげて、その子の持っている力を引き出してあげるところに、大人がいる役割と教育の意味があると考えます。そのために園でできることを、今後も工夫していきたいと思います。

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