子どもの「納得感」を優先した関わり方を 【園長の保育雑談】

先日職員会議で、職員と一緒に事例検討を行いました。それは、こんな事例です。
2歳児クラスの着替えの時間に、その日は「着替えたくない」と着替えコーナーに向かわないAちゃん。朝から「○○の柄のものが良かった」と主張していましたが、その日は残念ながらその服を持って来ていませんでした。案の定、着替えの時間になっても、頑なに着替えようとせずに、トイレの前の床に横になっている状態。保育者が着替えを進めると、ズボンだけは履き替えました。

まさに「イヤイヤ期」の子どもの対応についての事例検討です。職員からは、こんな意見が出ました。

  • 「これ、ステキね」と話したりして、他の着替えの洋服へ誘ってみる
  • いろいろな着替えの洋服をならべて、選択肢を示し、本人に選んでもらう
  • 「じゃあ、どうしたらいい?」本人に聞いて、少し待ってみる
  • 「○○の柄」のこだわりと似た絵本などを探して本人の気持ちをそらす
  • 「○○ちゃんはロッカーにある洋服で着替えているね」とか「○○くんと一緒に着替えてみようか」と仲の良いお友だちの関わりを上手く引き出して利用する

子どもと関わる際に大切なのは、赤ちゃんの時から「あなたはどうしたいの?」ときちんと本人の意思を確認することです。子どものこだわっている部分を、大人が否定したり叱ったりすることは望ましくありません。この場合「本人に選んでもらう」や「少し待つ」対応が、本人の自己決定や自己選択を尊重するものです。

しかしいろいろ誘ってみても、どうしても切り替わらない場合には、「じゃあ、○○してみようか」と子どもの言い分を呑んであげるのも一つの手です。
例えば靴が汚れているのにその靴じゃなきゃイヤだ、この道じゃなきゃイヤだ、これはどうしても食べたくないなど……、いろいろなケースが考えられます。

ただし子どもが主張を曲げなかった以上、最後まで子どもに責任を取らせるように対応した方がよいでしょう。
ちなみに先ほどの事例では、いろいろと先生が工夫しましたが、本人の気持ちが切り替わらなかったので、その日は着替えをしませんでした。今回のケースでは、うちの職員は子どもの「気持ち」に寄り添った対応を心掛けたのです。

ここで一番大切なのは、何より子どもの「納得感」です。子どもの行動を変えるには、背後にある気持ちに働きかけなくてはなりません。「気持ち」というのは、大人が「○○しなさい」と言って変わるものではありません。最終的には「自分で」立て直していかなくてはなりません。そのために大人は、「根気強く待ってみる」、「選択肢を与える」、「友だちを利用してみる」など、本人の「納得」の上で次の行動ができるように工夫する必要があります。

こう考えると、(大人はやってしまいがちですが)着替えたくない子に対してただ「着替えをしなさい」と促すのは、おかしな対応です。子どもの行動の背後には気持ちがあり、その気持ちを自分で調整できるように大人が向き合ってあげること、そこに保育や教育の難しさがあり、専門性があります。

本園の理念は「自立と貢献」ですが、やはり「自ら考え行動する」子どもを育成していくためには、「○○をしなさい」と大人の指示に従わせようとするのではなく、「本人の納得感」や「気持ち」を優先した関わりを大切にしなくてはならないと考えています。

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