ある研修会で、体の動きに未熟さが見られる2歳児が10年前よりも増えているとの報告が行われました。わずかな段差につまずいて転ぶ子や、砂場にお尻をついたままあそぶ子、短い距離の上り坂に歩ききれずに泣く子など、体力的に課題の多い子が増加傾向にあるとの報告が行われました。
またこれと同時に興味深い報告が行われました。それは2歳児特有の“反抗期“と呼ばれる、子どもの自己主張やこだわりの強さが以前に比べて弱くなってきているというのです。その背景に子どもが十分に体を使って遊ぶ体験が減ってきているのではないかと指摘していました。
子どもの意欲や関心は、五感や身体を使って周りの世界に存分に働きかける体験によって育まれます。そして反抗や自己主張は、このような意欲の育ちを土台として、他者と関わり、交わる中で顕わになってきます。自分の手を使ってあそんだり、あちこち道草をしながら自分の足で歩いて確認したり、じっくりと時間をかけて自分で靴や服を脱ぎ着したり、その他破いたり、投げたり、叩いたり、様々なやり方で物を扱ってみたりする中で、意欲や関心は育まれていきます。
テレビやゲームを中心とした家の中での生活では意欲や関心は育ちませんし、ましてや大人があれこれ先回りして子どもが自分でやってみる機会を奪ってしまったのでは意欲どころか、その時期に育つべき「自分」というものも育っていきません。
身体を使った豊かな体験に支えられた意欲や関心の育ちとともに「自分」の輪郭がはっきりとし、さらにそこで他者と衝突する経験や、「これをやりたい」という思いを他者に理解してもらい、その思いを形にする経験を重ねる中で、自分の中に他者の存在が刻まれ、他者と共に生きる自分が作られていくのです。
子どもが大人の言うことを従順に聞く傾向にあることは、一見するとよいことのように見えます。しかし、別の見方をすればこれは、大好きな人に逆らってまでも守りたい「自分」が育っていないことを意味しているのではないでしょうか。
そうしたことを踏まえ私たちは、何より子どもの意欲や関心を引き出せる環境を検討してきました。子どもの意欲や関心は、五感や身体を使って周りの世界に働きかける体験によって育まれるものです。当子ども園が、園庭をすべて砂場にしたのもそこで子どもが手を使って穴を掘ったり、感触を楽しんだり、時に裸足になったりと、まさに五感を使って存分に楽しんでほしいという思いからでした。
1月8日に0歳児、1歳児、2歳児用に屋上に遊具を設置します。よじ登る、くぐる、すべる、つかむ、足をかけるなど、子どもが体を動かしてあそぶ場所が、日常的にあることが、子どもの意欲や感心を引き出し、やる気や挑戦心を育むのです。
子どもの育ちにはこうした視点が何よりも大切だと考え、屋上に遊具を設置することにしました。ぜひ保護者の皆さんも見に来てくださいね。