赤ちゃんの頃からコミュニケーションは必須です【園長の保育雑談】

4月には、新しいお友だちが21名入園してきましたが、特にしずく組の赤ちゃんは親と離れて新しい環境に慣れるのに時間がかかります。そのため私もしずく組のお手伝いに入り、赤ちゃんと楽しく過ごしました。

赤ちゃんの特徴は何と言ってもマネをすることです。お口に手をあてて「あわわわ」とやれば、同じしぐさをマネしてやります。マネは、自分の脳に「外部の世界」を取り込むのにとても重要です。

ことばの始まりも、マネによるものです。よく、女の子の方が言葉を早く習得すると言いますが、親がしっかりと話しかけている限り、ことばの成長には男女の差がないこともわかっています。子育ての中で話しかけることは、実は私たちが想像する以上にとても大切なことです。

「話しかける」ということで、思い出したことがあります。かつて神聖ローマ帝国のフリードリッヒ2世が行った非道な実験があります。赤ちゃんに母乳やオムツや入浴などの最低限の世話をしましたが、赤ちゃんに話しかけたり目を合わせたりすることを禁じたという実験です。実験の結果は意外なものでした。

2歳になる前に、つまり言葉をきちんと覚える前に、全員死んでしまったのです。13世紀という時代を考えると、単に世話が不十分だった可能性もありますが、赤ちゃんに対してコミュニケーションを行わないとどうなるのかという実験として伝説的に語られています。

実は20世紀初頭にも同じような実験が行われました。精神科医のルネ・スピッツが孤児院で行った調査です。第二次大戦で戦争中多くの孤児が生まれました。孤児院では十分な食事と清潔な部屋が準備されました。唯一足りないものは、コミュニケーションです。

戦争中たくさんの孤児が集まったにもかかわらず、面倒を見る大人の数が足りず、乳幼児一人ひとりとコミュニケーションを図る余裕はありませんでした。調査の結果91人中34人が2歳までに亡くなってしまったと言われています。また生存した孤児も、その後成長する過程の中でコミュニケーションに障害が生まれたり、精神疾患等の症状が見られたりしました。

たとえ栄養や衛生面が足りていたとしても、コミュニケーションやスキンシップがないと、人は成長しないということなのです。動物は栄養と衛生状態が満たされていれば、成長の途中で死ぬことはありません。人間だけがこのような特徴を持っています。

先生たちが、「オムツ替えるよ!」と話しかけたり、泣いているときにお尻や背中をやさしく叩きながら、「○○ちゃん!どうしたかなあ?」と言ったりと、そんなふうにしっかりとしたコミュニケーションを行(っていくことが、赤ちゃんの成長にはとても大切なことなのです。

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