親や保育者は子どもに対してどう関わるのが最も望ましいのか、そしてどのような関わりが子どもの発達を促すのか、最近いろいろな研究からこのことが明らかになってきました。
「赤ちゃんにたくさん話しかけると表現力が豊かになる」とか「赤ちゃんがことばを覚えるためには、たくさんのことばを聴く必要があります」等、しばしば言われることがあります。しかし赤ちゃんと関わるときに、大人がたくさん話しかけた方があまり話しかけないよりもより効果があるかというと、必ずしもそうではないと考えられています。例えば私たち大人は、こんなことに身に覚えがありませんか?
- 赤ちゃんが泣いていないのに、「もうおなかがすいているはずだ」と言って決まった時間にミルクをあげたり……。
- 一人でトイレに行って自分で全部できるのに、「パンツをここまでおろして」とか「手を洗うのよ!」などと先回りして言って全部やってあげてしまったり……。
- 子どもが自分でおもちゃをつくっているのに、上手に作れていないという理由から勝手に大人が手を出して全部つくってあげちゃったり……。
以上の例は、大人からしてみれば子どもの様子を「見たり」行動を「待ったり」する必要もなく手っ取り早く物事が進むので望ましい関わりのように見えるかもしれません。
しかしひとたび子どもの立場に立った時、上記のような関わりは決して望ましくありません。よく靴を履こうとしている子どもに、大人が手を出すと突然子どもが怒り出したりする経験はありませんか?
子どもは目の前のやるべきことに対して向き合う力を持っているのに、大人がこれを「邪魔」しているのです。
子どもは不快な状況に直面した時に、自分で解決するかまたは解決できないときには大人に助けを求めるか、その都度選択をして困難を乗り越える経験を積み重ねていきます。
こうした経験を積み重ねることで、子どもは「自分はできるんだという自信」を獲得していきます。したがって大人が先回りしてやってあげることは、不快な状況や困難を子どもが体験する機会を奪うことであり、何より子どものやる気と意欲を削いでしまいます。これでは子どもが自分のことを自分で律する力や感情を制御する力が十分に育ちません。
大切なのは、子どもが求めてきたときにタイミングよく応えてあげること、そして子どもが集中して取り組んでいるときに「邪魔しない」ことです。子どもはいつでもどこでも大人に頼りたいわけではなくて、怖かったり驚いたりおなかがすいたり痛かったりなど、困難なことを体験した時に特定の大人にくっついて気持ちを落ち着かせているのです。
大人は子どもにとっての安全基地であるとともに、自分の力を引き出してくれる存在でもあると言われています。子どもの立場を尊重した関わりを心がけたいものですね。