「レジリエンス(立ち直る力)」を育んでほしい【園長の保育雑談】

 乳幼児期に育みたい力は、「自立」ですが、最近これに加えて「レジリエンス」ということが言われるようになってきました。
この言葉は、ストレスを受けても、それにめげることなく、人間の心の「立ち直る力」という意味で使われます。私自身も、乳幼児期にこの「レジリエンス」という力を身につけることが大切だと考えています。

今回はどうすれば「レジリエンス(立ち直る力)」が身につくのか、その時の大人の役割は何なのか、これについて話したいと思います。

大人は子どもの「安心基地」になっていること

 子どもは、何かストレスを感じると「泣く」という方法によって、自分の気持ちを相手に伝えようとします。

例えば「お腹がすいて泣く」、「お母さんと離れて泣く」、「できると思ったことができなくて泣く」等々です。レジリエンスとは、自分の気持ちを「立て直す」ことですから、この時の大人の役割は子どもの気持ちに「寄り添う」ことであり、この気持ちを「立て直す」ように応援してあげることです。

この意味でも赤ちゃんが泣いたら「あやす」という行為は、非常に重要です。「不安だったけど、大人に抱っこされてすごく安心した」という数えきれない子どもの安心体験が、気持ちを「立て直す力」を育んでいくと考えられています。大人は子どもの「安心基地」になっていること、これが何より大切なのです。

自分の思いで遊ぶことの大切さ、それを見守る大人の大切さ

また、子ども時代の「遊ぶ」という行為は、五感を使ったり、身体を動かしたり、何かを発見したりと、つまり遊びを通して、それぞれの知識や感動が獲得され、定着するという経過をとります。

例えば砂場遊びを一つとっても、子どもの学びはたくさんあります。砂場の表面の砂はさらさらしているけれど、下に掘っていくほど湿った砂になっていく、山を高く作るには、湿った砂がたくさん必要だ、という科学的な発見! またトンネルを完成させるには、掘る深さや山になっている砂の重さを考え、慎重に進めないといけない。友達と一緒の作業となると、お互いに知恵や指示を出したり、助け合うことが必要になります。

それでも、思い通りにいかないときには、他の方法を考えたり、自分の気持ちを切り替えたりする経験もすることでしょう。さらに、この「思うように作り上げることができた」「楽しかった」という達成感や満足感は、「自己肯定感」を支える感情であり、自分が何かを成し遂げることができたという感覚は子どもの自信の源になります。

子どもが「失敗をたくさんできる」という環境が大切です

この自己肯定感と自信こそが、レジリエンスを育む土台となり、レジリエンスに欠かせないものと考えられます。幼児期に思い思いに遊びを充分に経験した子どもは、傾向的に困難にぶつかっても、自分で考えて試行錯誤することができると言われています。

自分の思いで遊ぶ経験を通じて、多角的な見方を獲得しているともいえるのではないでしょうか。当然大人の対応としては、子どもが工夫して遊んでいる様子を見守り、それほど口を出さずに、安心した居心地のよい環境をつくることです。

子ども自身が遊びに前向きに取り組めるようにさりげなく支援し、子どもの中に潜んでいる可能性を発展させることができるように配慮します。

大人は遊びの主導者ではなく、あくまで支援者です。指示や命令を出すのでもなく、しかし放っておくでもない、ちょうどよい大人との距離感が、子どもの「レジリエンス」を育んでいくようです。私たち保育者も配慮していかなくてはなりませんね。

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