まずは日本語のリズムで! 英語より大切な“言葉の土台”

子どもたちの成長の早さには、本当に驚かされます。生まれた時の体重は約3,000gですが、たった1年後には約3倍の10kgほどになるのです。こんなにも大きく成長する時期は、人生の中でも他にありません。

こうした目に見える身体の成長のほかに、子ども園での6年間で最も大きく成長するものの一つに「言葉の力」があります。

言葉をまだ話せない赤ちゃんは、周りの人の表情をよく見て、色々なことを感じ取っています。そして、成長するにつれて、指をさしたり、「あー」「うー」といった赤ちゃん言葉(喃語)を使ったりして、気持ちを伝えようとします。まだ言葉を話せない頃から、子どもはすでにお父さんやお母さん、そして私たち保育士の言葉をたくさん吸収し、自分なりに表現しているのです。

なぜ、このような話をするのかというと、「言葉」は私たちが考えたり、人とコミュニケーションを取ったりするために、とても大切だからです。この時期にしっかりと言葉、それも「母語」を身につけることは、少し大げさかもしれませんが、その後の人生に大きな影響を与えると考えています。

例えば、しずく組(0歳児)、ひかる組(1歳児)、にじ組(2歳児)では、保育士が意識して「言葉と体験を結びつける」ことを行っています。「○○ちゃん、靴を履こうね」「お洋服を、脱ぎ脱ぎしようね」「○○ちゃんは、今眠っているね」「今日のおやつは、とってもおいしいね」というように、目の前で起こっていることを言葉にして、子どもたちに伝えています。

もちろん、子どもたちはまだ言葉で答えることはできません。しかし、大人がこのように言葉で伝えることで、子どもたちは言葉の意味や使い方を学び、世界の一部を理解していきます。大人が経験していることを言葉で伝えることは、子どもたちの成長にとって、とても大切な働きかけなのです。

最近はグローバル化が進み、小さい頃から英語を学ばせたいと考える方もいらっしゃるでしょう。しかし私たちは、今まさに言葉を覚えようとしている子どもたちにこそ、まずは日本語の豊かさを伝えたいと思っています。日本語には、独特のリズムや響き、そして深い意味合いがあり、それが子どもたちの豊かな想像力を育むと信じています。

昨年度は、「日本だじゃれ協会」の方に来ていただき、たいよう組の子どもたちと一緒におもしろい言葉遊びを楽しみました。また、毎年「じゅげむ、じゅげむ、ごこうのすりきれ…」という早口言葉は、子どもたちの間で大人気です。おもしろい言葉にたくさん触れることで、自分の考えを言葉でしっかりと表現できる、そして想像力豊かな人に育ってほしいと願っています。

個人的な話になりますが、私には3人の子どもがいます。一番下の子は現在大学生ですが、子どもたちの成長を振り返ると、母語さえしっかりと身につけていれば、英語(第二言語)は小さい頃ではなく、中学校や高校、大学からでも十分に間に合うと感じています。言葉を敏感に吸収する乳幼児期には、まず日本語(母語)を中心とした言葉への興味を育て、言葉のリズムやおもしろさ、言葉の使い方を学ぶきっかけを作ることが大切なのではないかと考えています。

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