先日新しくたいよう組になる子どもたちと、ピーマンの種をプランターに蒔きました。この種は園の給食で使うピーマンから子どもたちが苦労して採ったものです。まずは生の種を乾燥させた方がよいと思い、何日か日をあけることにしました。
しかし、次の日から何度も「いつになったら、種を蒔くの?」と子どもたちが言い寄ってきます。私は不思議に思って尋ねてみました。「どうしてそんなにピーマンの種を蒔きたいの? みんなはピーマンが好きなの?」。
すると、子どもたちから意外な返答が返ってきました。
「ちがうよ! ピーマンはそんな好きじゃないけど……、でもピーマンの芽が出て、ピーマンができたら、それを採るじゃん。そしたら食べるんじゃなくて、八百屋さんに売ればお金になるでしょう!? お金がたくさん入ると、ほしいものが買えるんだよ」と。
どうやら子どもたちにとってピーマンの種は、「お金のなる木」だったようです。
感心したのは、子どもたちが収穫した野菜を売るという発想を持っていることでした。
野菜の生産活動と消費活動を結びつけ、物々交換の原理を子どもながらに理解しているようでした。園での「お店屋さんごっこ」が学びになっていると感じました。
この5日後に、子どもたちと実際に種まきをしました。「種は、ピーマンの赤ちゃんだから、大事に蒔くんだよ」と伝えると、土を崩さないように、そっと種まきをする姿がありました。子どもたちにとっては興味深く楽しい体験だったようです。
今回のピーマンの例のように「子どもが物事へ意欲的に取り組む秘訣」ってどこにあるのでしょうか?
私は、子どもの「やってみたい」を大切にし、自ら体験することだと思います。
「あれ、不思議だな」「どうしてだろう?」「じゃあ、どうしたらいいんだろう?」と、深く身体に反応してしまうような感情である「情動」が働くような問いを抱き、そして「え!?」「ほんとに?」「なるほど!」「こうやったら、できるかもしれない」と気持ちが高まる経験を通して、体験的な学びへとつながっていくのではないでしょうか。
好奇心やワクワク感のみなもとは、「どうなるかわからないけど、自分でやってみたらなんだかおもしろい」。そんなところにあるように思います。
しかし大人は、「どうなるかわからない」怖さや、効率が悪いことに我慢できずに、つい子どもに口や手を出したくなってしまいます。
先ほどの例では、子どもに興味を持ってもらおうと大人がピーマンの種を買うことから、種を蒔くところまで、お膳立てしてしまっていたらどうでしょうか?「育ったピーマンを八百屋に売れば、ほしいものが買えるかも」という子どもの発想は、生まれなかったかもしれません。
大切なのは、ある程度子ども自身に任せ、本人に考えてもらい決めさせることです。子どもが挑戦することを歓迎し、時に冒険し失敗することもOKとする、そんなゆとりのある姿勢を大人が身につけていくことで、子どもの好奇心は育くまれていくのだと思います。