現在、東京23区内の認可保育所では、土地が限られているため、狭いスペースで保育を行っています。本園のある新宿区でも認可保育園のうち、2~3割程度しか園庭を保有していません。本園でも、子どもたちが体を動かす場は広くはない園庭と屋外遊戯場に限られており、自由に走り回ることが難しい状況です。近くの公園を利用することも考えましたが、運動遊びに特化するのは難しい現実があります。
乳幼児期には、自分の思うように体を動かすことが身体の発達を促し、自己を十分に発揮して充実感や満足感を得るために非常に大切です。子どもは体を十分に動かすことで情緒が安定し、物事に集中して取り組む姿勢や意欲が育まれます。特に支持力(全身のバランス力)、跳躍力、懸垂力は、すべての動きの基本です。本園では、かつて子どもたちが自然に身につけていたこれらの基本的な動きを、乳幼児期に無理なく育む仕組みを作りたいと考えました。
そこで、屋外ではなく園内で取り組むことができる運動遊びを検討し、「社会福祉法人種の会・世田谷はっと保育園」で行っている回遊型の運動遊びを参考にして、本園でも実践することにしました。
サーキット遊びのねらいと内容
本園では、0歳児から5歳児までの全6クラスで「わくわくサーキットあそび」を毎週1回行っています。これは、段差やマット、坂道、ジャンプ台、跳び箱やはしごなど、さまざまな運動器具を組み合わせて配置し、子どもたちがいろいろな身体の動きを体験しながら回遊する運動遊びです。
この遊びの特徴は、特定の身体の動きを何度でも繰り返しできることです。室内で運動器具を発達年齢に応じて配置するため、低年齢児でも安全に集中して運動遊びができる点が利点です。
「わくわくサーキットあそび」のねらいとしては、以下のものがあります。
全身のバランス感覚を養う:凹凸や段差のある床を歩いたり、くぐったり、のぼったり、四つん這いの姿勢を取ったりすることで、全身の筋力を使い、正しい姿勢を保つことができます。平均台やはしごを組み入れることで、平衡感覚を養い、転びそうになっても立て直す力を身につけます。
身体のいろいろな部位を連動して動かす:つまずいたり転んだりしたときに、手や足を連動して動かせるようになると、ケガをしにくくなります。タイミングよく動いたり、力の加減を調節したりすることで、より複雑な遊びや運動の基礎を育むことができます。
モノや人との距離感をつかみ、ボディーイメージをつくる:走ったら危ない、ジャンプしたらぶつかる、姿勢を低くしないと潜れないなど、距離感をつかむことで、自分のボディーイメージが形成されます。また、複数の子どもが回遊することで「待つ」ことも覚えます。
選択と決定を自分で行う:子どもがどのルートを通るか、どの方法で進むかを自分で決めて実行します。繰り返し行うことで、コツをつかみ、より遠くへジャンプするなどの達成感を得ることができます。
サーキットで経験する多様な運動動作
子どもたちはたくさんの運動遊びを体験します
発達年齢に応じて、次のような運動遊びを取り入れています。
- トンネルくぐり
- 鉄棒(ぶら下がり、前まわりなど)
- マット(ゴロゴロ転がる、前転、側転など)
- 戸板のぼり、くだり
- はしご渡り
- フープ
- すべり台
- 平均台
- ゴムとび
- ボール遊び
まとめー子どもが自立的に活動する中で、身体を動かす楽しさを感じてほしい
本園の運動遊びでは、乳幼児期の子どもにとって「運動」とは高度な技術習得ではなく、友だちと楽しく身体を動かす遊びです。そのため、保育者は教え込みや一方的な指導にならないよう配慮し、子どもたちが自ら進んで取り組める環境を作っています。「わくわくサーキットあそび」を通じて、子どもたちが多様な体の動きや体を動かす心地よさを体験し、心身の健やかな成長を大切にしていきたいと考えています。