子どもの脳は友達同士で「育ち合う」【園長の保育雑談】

子どもの成長には、身体の成長の他に脳の成長があります。脳の成長とは、知識を詰め込むだけではありません。考える力、創造する力、対話する力、感情をコントロールする力などが、様々な体験を通して脳を思う存分使い、育っていくことです。それが社会に出たときの生きる力の基礎になります。知識を詰め込むことは小学校以降でまったく問題ありません。むしろ乳幼児期に育むべきなのは、考える力や感情をコントロールする力なのです。こうした能力を伸ばしていくために、主に大切な環境が二つあると考えています。

一つは、子どもが安心できる環境にしていくことです。具体的には、「失敗しても責められない環境づくり」と「大人の、子どもへの穏やかな関わり」が重要なポイントになります。大人に比べると子どもは、できないことばかりです。ついそれを指摘してしまう、というのはとてもよく分かります。

しかし、どうか「失敗は成長の源」だという価値観を持ち、あまりいろんなことに目くじらを立てず、見守ってほしいのです。たとえ子どもが泣いたりわめいたりしても、冷静に穏やかに対応できる大人がいれば、子どもは自分の気持ちを素直に外に出すことができます。

例えば、大人が子どもの気持ちに寄りそいながら子どもに「どうしたの?」とか「どうしたいの?」とたずねることによって、自分の置かれた状況や自分の気持ちを整理したり、解決方法を考えたりできるよう導いてあげることです。これは今までも何回か話してきました。

そしてもう一つ大切なこと、それは「子ども同士が関わる環境をつくる」ことです。最近の研究では、大人が子どもに何かを教えるよりも、むしろ他の子どもから刺激を受けて、まねて、教え合い、トラブル等を体験しながらも直接関わり合う方が、子どもの脳を活性化させ、発達を大きく促すと言われています。本園で、0・1歳児クラス及び3歳以上児クラスが同じ保育室で生活しているのは、こうした子ども同士で刺激し合う環境が子どもの成長にとってプラスに働くと考えているためです。
実際に0・1歳児クラスの子どもたちですら、食事の時に月齢の高い子が低い子の手を引っ張って座る席を教えてあげたりする姿があります。あるいは3歳以上児クラスでは、年上の子が年下の子に塗り絵や折り紙、レゴなどを教えてあげたりする姿は日常的に見られます。また、トラブルがあってもすぐに保育者が介入するのではなく、落ち着いた場所でお互いに話し合う習慣・時間を大切にしています。時には泣いたりしながらも、自分の気持ちをさらけ出し、相手の気持ちと折り合いをつけていく体験は、将来の対人関係を築く上で基礎となる力を育んでいきます。

ちなみに、一般に子どもは自我の成長と共に自己主張が激しくなります。しかし同時に自己抑制力も後追いで育っていきます。アクセルとブレーキのようなものですが、このブレーキは大人が教えて育つ部分は少ないようです。むしろ友だちとのトラブルや異年齢のような環境の中で本人が体験して学習していく部分が大きいと考えられています。

結局のところ、知識を詰め込むことよりも「子どもが安心できる環境」と「子どもが他の子どもから刺激を受ける環境」を上手につくっていくことが、子どもの脳の成長を促すポイントになっているのです。

園では子ども同士が関わるシーンがたくさん見られます
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