子どもは生まれた時から主体的な存在です。成長とともに、「自分でやりたい」「これはイヤだ」「もっと○○したい」と、自己主張が強くなっていきます。これは、自分の思いや考えを行動に移せるようになった証であり、喜ばしい成長の姿です。
しかし大人は、「言う通りにしてくれない」「衝動的に動く」「興味があちらこちらに移る」と、ついイライラしてしまうこともあるでしょう。「寄り道」や「無駄」が多いように見えることもあります。
子どもの成長では、まず「好奇心」が大きな原動力となります。脳の働きに例えると、「アクセル」が先に勢いよく働き、それを調整する「ブレーキ」が後から少しずつ育っていくのです。
「アクセル」とは、「やってみたい!」「触ってみたい!」「行ってみたい!」という好奇心や挑戦する意欲です。子どもたちは、その力をたっぷり使い、経験を重ねています。
一方、「ブレーキ」は、気持ちや行動を調整し、順番を待ったり、やりたいことを少しがまんしたりする力です。この働きは、幼児期にはまだ発達の途上にあります。
そのため、
友達のおもちゃがほしくなって、手が出てしまう
興味のあるものを見つけると走り出してしまう
「ダメ」と言われても、ついやってしまう
といった姿が見られます。大人には困った行動に見えても、子どもたちは日々の経験を通して、「ブレーキのかけ方」を学んでいる真っ最中なのです。
もちろん、危険なことや他人を傷つける行動は、大人が止める必要があります。しかし、「動きたい」「しゃべりたい」「やってみたい」という欲求を、厳しく叱ったり、むやみに抑え込んだりすることは望ましくありません。指示に従わせることばかりを優先すると、自分で判断し、行動を調整する力を育む機会が失われてしまうからです。
当園では、「ダメ!」とただ禁止するのではなく、
「順番にしようね」「走りたい気持ちだったんだね」「どうしたらよかったかな?」
と気持ちを受け止め、子ども自身にも考えてもらいながら、一緒にブレーキのかけ方を学んでいきます。
この力は、家庭でも育まれます。一緒に洗濯物を干したり畳んだりすること、料理の手伝い、食後の片づけなども大切な経験です。誰かと一緒に取り組む時には、相手の様子を見て、順番を待ち、動きを合わせることが必要になります。これも、行動を調整する「ブレーキ」の練習になるのです。
「何度注意しても同じことをしている!」と思う時もありますが、子どもは最初からアクセルとブレーキを上手に使い分けられるわけではありません。夢中になって遊び、挑戦する経験を重ねながら、少しずつ周囲の状況に気づき、自分の気持ちや行動を調整する力が育っていくのです。
大切なのは、ブレーキを早く身につけさせようとして、子どものアクセルまで抑えてしまわないことです。「やってみたい!」という意欲は、自ら考え、行動し、成長するための大切な原動力です。その好奇心を十分に発揮できるからこそ、さまざまな経験や人との関わりを通して、やがて自分でブレーキをかける力も育っていきます。
子どもたちの「やってみたい!」を大切にしながら、うまくいかない時には一緒に考え、時には立ち止まることも学んでいく。そんな成長の過程を、ご家庭と園とで温かく見守っていきたいと思います。