ケンカも、お互いの気持ちに折り合いをつける大切な経験

子ども園は、子どもたちが集団の中で生活を始める「社会への第一歩」です。友だちと一緒に遊ぶ楽しさを知り、「また一緒に遊びたい」という気持ちが育っていく一方で、時にはケンカやトラブルも起こります。

園では、危なくない限りすぐに大人が介入しないようにしています。子どもは、小さなトラブルでも、その経験を重ねることで、対応方法を学んでいくためです。子ども同士のケンカは、人との関わり、社会性を学ぶまたとない機会なのです。

子どもたちは、「一緒に遊びたい」という気持ちが強くなるからこそ、トラブルも増えていきます。「これで遊びたかった」「ぼくが先に使っていた」「一緒にやろうと思ったのに」など、それぞれに思いがあります。しかし、まだ幼いうちは、その気持ちを十分に言葉で伝えることができません。

そのため、自分の思いが通らないと、思わず手が出てしまったり、おもちゃの取り合いになったりすることがあります。
つまり、ケンカは「どちらかが悪い」から起きるのではなく、お互いの思いがすれ違った結果なのです。だからこそ、この時期の保育者には大切な役割があります。それは、「どちらが良い・悪い」と判断することではありません。私たちはまず、一人ひとりの話を丁寧に聴きます。「どうしたの?」「何が嫌だったの?」と、それぞれの気持ちを十分に受け止めます。

そして保育者は、子どもたちの「通訳」になります。

「Aちゃんは、このおもちゃを使いたかったんだね。」
「Bくんは、まだ遊びが終わっていなかったんだね。」

子ども自身がまだ言葉にできない思いを、お互いに伝わるように言葉にしていきます。

では、もし子どもたちの間で「いざこざ」が発生したときはどのように対応すべきでしょうか?まず、もし叩いたり押したりするような「行為」があった場合、それはいけないことですので、こういうことには厳重に注意します。

そして、子どもの行動の裏にある背景や理由……例えば「悔しかった」「使いたかった」「一緒に遊びたかった」という気持ち……こうした思いについては否定しないことを大切にします。自分の気持ちを大人が分かってくれたという安心感があって初めて、子どもは相手の気持ちにも目を向ける余裕が生まれます。

その上で、「じゃあ、どうしたら二人とも楽しく遊べるかな?」と、解決方法を子どもたち自身に問いかけます。「順番に使おう」「一緒に遊ぼう」といった答えを、自分たちで考え、納得して解決していく経験を積み重ねることが、主体性や社会性を育てていきます。

ケンカが起きると、大人はつい「仲良くしなさい」とか「ごめんねは?」と早く終わらせたくなります。しかし、子どもたちにとって大切なのは、ケンカをしないことではなく、ケンカを通して相手の気持ちを知り、自分の気持ちの伝え方を学び、また一緒に遊べるようになることです。

保育者の役割は、ケンカにならないように子ども同士を関わらせないようにするのではなく、一緒に遊びながらも、自分たちで折り合いをつけ、よりよい関係を築いていけるよう、そばで温かく見守り、必要な時には「仲立ち役」として支えていくことです。

保護者の皆さんも、お子さんがお友だちとのトラブルを話してくれたときは、まずは「そうだったんだね」「嫌だったね」と気持ちを受け止めた上で、「相手はどんな気持ちだったのかな?」「次はどうしたらいいと思う?」と一緒に考える時間を持っていただけると、園での経験が家庭でもつながり、子どもたちの社会性はさらに育っていくと思われます。