「自分で!」は成長の芽が伸びようとしているサイン

1歳を過ぎる頃になると、なんでも「自分で! 自分で!」と強く主張する姿が見られるようになります。靴を履く、パンツを脱ぐといった身の回りのことから、エレベーターのボタンを押す、扉を開けるといった日常の何気ない動作まで、世界を自分の力で動かしてみたい、そんな意欲に満ちあふれる時期です。これが、子どもにとって人生で最初の「自我の芽生え」です。

忙しい毎日のなかで「自分で!」と主張されると、大人はつい「『自分で!』じゃないよ、ママ(パパ)がやるよ」と手を出したくなったり、「まだできないよ」とストップをかけたりしたくなります。

手を出すと余計に泣いて収拾がつかなくなることもあり、付き合う大人側にもエネルギーが必要です。しかし、この「自分で!」という主張は、自立に向けた大切な成長の芽がぐんぐんと伸びようとしているサインなので、大切に考えてほしいと願っています。

ただ、「自分で!」とは言うものの、この時期の子どもはまだまだ自分一人ではうまくできません。例えばズボンを履く動作一つをとっても、入口は一つですが出口は二つというズボンの特徴から、片方に両足を入れてしまったり、手足を同時に動かす調節が難しかったりします。

やりたい気持ちと、うまくできないもどかしさの間で葛藤し、時には泣いて怒ることもあります。

実は子ども自身も、「自分一人ではまだ難しいかもしれない」とどこかで感じているのです。つまり「自分でやりたい!」の裏には、「最後まで自分でやり遂げたいけれど、困ったときは助けてね」という大人への信頼の気持ちが隠れているのです。
では、どのように付き合っていけばよいのでしょうか。

大切なポイントは「先回りしないこと」と「さりげない手助け」です。これは保育士も実践していることの一つです。

子どもが葛藤しているときは、まず「手伝おうか?」「一緒にやる?」と声をかけてみます。「イヤ!」と言われたら、「じゃあ、ここで見てるね」と伝えてあげます。それでも苦戦しているときは、ズボンの向きを少し整えたり、足が通りやすいよう軽く手を添えたりと、子どもが「自分でできた!」と感じられるギリギリのラインで、さりげなく手助けをします。

無事に足がすっと通ったら、「自分で履けたね!」と笑顔で一緒に喜びを分かち合うと良いと思います。「(手伝ってもらいながらも、)自分でできた!」という達成感こそが、子どもの自信や「次もやってみよう」という意欲(自己効力感)を育てていきます。

自我の芽生え期は、大人の忍耐が試される時期でもあります。大人からすると、面倒で大変だなと感じることもあるでしょう。ただ、これが永遠に続くわけではありません。子育て全体でみると、ほんのわずかな一時期のことです。

例えば時間のゆとりがない時は無理をせず、「朝は忙しいから大人がやって、帰ってきてから『自分で』をやろうね」と割り切るのも大切だと思います。子どもの伸びやかな成長の芽を、園とご家庭で温かく育てていきたいと思います。