乳幼児期に大切なのは「脳を含めた身体づくり」

ご家庭で子どもと生活していると、子育てで悩むことがたくさんあるかと思います。

「なかなか寝てくれない」「ご飯を食べてくれない」「一度泣くとなかなか泣き止んでくれない」「ことばがなかなか出てこない」「とにかく落ち着きがない」…。そんなとき、ついスマートフォンで検索したり、相談したりしたくなるのではないでしょうか。
インターネットにつなげて、SNSを見たりAIを使ったりすれば、子育てについてたくさんの情報を簡単に得られますし、実際に便利です。しかし同時に、少し気をつけたいこともあります。

SNSを開けば、「3歳でひらがなが読めた」「4歳で○○ができた」といった、ほかのお子さんの姿が次々と目に入ってきます。それを見るうちに、「うちの子はまだできない」「何かさせた方がいいのでは」と、他の子どもと自分の子どもを比べて不安になってしまうことがあります。
しかし、そもそも0歳から6歳くらいまでの子どもにとって、最も大切なことは何でしょうか。

私は、乳幼児期にまず大切にしたいのは、「脳を含めた身体づくり」だと考えています。文字を覚えることや計算ができることよりも、その前に、朝起きる、お腹がすく、たくさん遊ぶ、しっかり食べる、ぐっすり眠る、気持ちよく排泄する。そんな人間としての基本的な身体の働きを整えていくことが何より大切です。

たとえば、朝になったらカーテンを開けて日の光を浴びる。昼間は外に出て、歩いたり、走ったり、登ったり、しゃがんだりして身体をたくさん動かす。お腹をすかせて食事をする。そして夜になったら部屋を暗くして、しっかり眠る。
とても当たり前のことに見えますが、夜行性ではなく、昼行性のヒトとして当たり前の生活を積み重ねることが、子どもの脳や身体が育つための大切な土台になります。

人間の脳には、朝の光をあびたり身体を一定のリズムで動かしたりすることなどによって働きが促される仕組みがあります。歩く、走る、よく噛む、歌う、踊るといった日常の活動も、脳の覚醒や生活リズム、心身の安定に関わっています。

また、大人との触れ合いも大切です。抱っこしてもらう、一緒に笑う、泣いたときには大人にやさしく応えてもらう。「困ったときには誰かが助けてくれる」という安心感の中で、子どもは身体だけでなく心も健やかに育まれていきます。

このため大久保わかくさ子ども園では、子どもが身体をたくさん使って遊ぶことを大切にしています。走るだけではありません。よじのぼる、木の実を拾う、穴を掘る、虫を追いかける、水や泥に触れる、友だちと大笑いする。大人から見ると「ただ遊んでいる」ように見える時間こそ、乳幼児にとっては、とても密度の高い学びの時間、脳が急激に成長している時間なのです。遊びの中で身体も脳も五感も総動員されることで、子どもの意欲や興味、集中力が育まれていきます。

乳幼児期は、「何ができるようになったか」を急いで増やす時期ではありません。

人生100年時代、子どもたちは、これから長い人生を生きていくための身体をつくり、感じる脳を育て、生活のリズムの土台をつくる時期です。早く文字が読めなくても問題ありません。誰かより早く何かができる必要もありません。よく遊び、よく食べ、よく眠り、安心できる人とたくさん関わる。そんな当たり前の毎日の積み重ねを、まずは家庭の生活の中で大事にしてほしいと思います。