早稲田大学福島せんせいの保育メモ(2)

今年も早稲田大学の福島先生が週に1回程度、ひかる組の保育に参与観察に入っています。日本語教育、言語教育の専門家による「幼児教育・保育」の視点を書いてもらいました。

4/21園全体が子どもたちの教材!

屋上にいくとき、階段を順番に上がらせていました。「階段」も教材なんですね。本当、園全体が「意味」を子どもたちに発しています。様々な遊具も子どもたちに意味をアピールしていて、遊具を使うことで、大切なこと(危険でないこと、他の子どもへの配慮など)を、その都度、先生方から声がけされていたのが印象的でした。

また、一歳児はことばをあまり話さないのですが、先生は文脈で理解し、上記のような注意の言葉がけの他に、できていることの延長(その先)に言葉が続いているようでした。このあたりヴィゴツキー(最近接領域)っぽいなと思いました。

5/19ことばがずいぶん増えていた!

部屋に入った途端に絵本をもって集まる子どもが多くて、少し戸惑いました。絵本を持ってきながら、「ブーブー、バイバイ」と言うなど、しばらく見てない間ですが、ことばがずいぶん増えているという印象を受けました。今回はKくんが、遠くから「みてみて」と言ったり、Yくんが、車に乗って、後ろを押すように頼まれたりしました。

本を持ってきて、その場で「本をよんでくれ」というのとは異なり、また一歩進んだ働きかけだなと思いました。つまり、絵本は、一緒にいることで「文脈」が共有され、そのうえで「行動」で理解させるコミュニケーションと、距離が離れている=文脈が必ずしも共有できない中で、ことばで表現するコミュニケーションは、違うものだなと思いました。

5/26どこにもないことばが、実体に?

一歳児クラスを見学して2ヶ月がたちます。同じクラスの子に継続的にかかわることで、この間の子どもたちの発達の様子を見ることができました。言語だけでなく、身体も情緒も成長していく様子が、観察できるようになりました。これは現場にいないとわからないことで、本当に感謝しています。

Tくんが、飛行機の絵本を読みながら空を指さします。Yくんが、絵本の蝶々をみてから、シートのちょうちょを指さします。Kちゃんも、いっしょにちょうちょをシートに探す。共同注意を「ひこうき」「ちょうちょ」という発声と同時に行うことで、ことばが共有されていくような気もしました。どこにもないことばが、実体を持つようなイメージですね。

6/2発達するのがデフォルトな職場ってすごい

一歳児クラスは本当に発達の進度が早く、一週間が本当に長い期間のように思えます。今週の驚きは、Rちゃんが歩いていたこと。その前の週までは、屋上に行くにも靴は履いていませんでしたが、その週は真新しい靴を履き、何事もなかったように、よちよちと歩いていました。

先生に「歩いてますね」と言うと「はい。ちょっと前に歩くようになったんですよ」と誇らしげに言われたのが印象的でした。発達する、育っていくのがデフォルトという職場は、なんと健康的なんだろうか。

発達という点からは、Yくんが身体的にも精神的にも目立ちます。とりわけ活動的になったYくんが機嫌よく車に乗っていると、後ろから、他の子どもが押したがる。ただ、Yくんの運動量とその子の歩幅は合いません。Yくんは迷惑そうでしたが、しばらくその子の動きに合わせていました。

ただ、しばらくして我慢しきれなくなって、先生になんとかしてくれと要求します。Yくんの体力であれば、そのまま振り切る事もできたはず。ただ、そうせずに先生に要求したということは、自らの行動が引き起こす事態を想定できたのと、それを回避すべく他者に依頼ができる社会性をもっていることを意味します。

別のシーンでは、別の子どもがYくんの車に乗りたがって後ろからついてきて、しまいには泣き始めます。Yくんはしばらく車を動かしていましたが、車をその子に明け渡します。くるまに飽きたわけでなく、明らかに譲ったのだと思います。

その後、Yくんは、屋上から部屋には帰りたがりません。最後の最後まで、一人になっても屋上にいます。最終的には、先生に抱きかかえられて屋上を去りましたが、先生はYくんの「未練の原因」である、ものや他の子どもにタッチさせてから、その場を去りました。丁寧な保育だと思います。私には思いつかないし、そんなYくんの未練を観察すらできなかったです。

6/16モノとの関わりも大切な一歳児

少し慣れてきたので、観察できる子どもの数も少しずつ増えてきています。

Sくん…Kくんと一緒に野菜の本を読んでいると横から入ってきます。だいこん、にんじん、かぼちゃの名前を知っています。知らなかった「じゃがいも」「さつまいも」を教えると、かなりクリアな音声でリピートできていました。あれだけ発話がしっかりしたケースは珍しい気がします。
Eちゃん…Eちゃんの音楽との関係について、少し注目して見てみる。始業の歌でしっかり振りを付けて歌っているのは、Eちゃんだけ。後の子どもはまだぐずついています。ただ、昼ご飯の歌は、Eちゃんだけでなく、かなりの子どもが歌っていました。外遊びが済んで言語が活性化した後だからだろうか?「働く車」の歌はかなりの子どもが歌ってました。先生もうまく子どもをのせて歌っています。

一歳クラスは言葉だけでなく、身体の発達や認知の発達が顕著にみられます。外遊びをするのに階段を登ったり、靴と格闘したり、自転車にふらふらしながら乗ったり、モノとの関わりがすごく大きいのだと思いました。そして、先生方もそのプロセスに時間をかけて経験させているようでした。それを考えるとこども園の環境は入念に組み入れられた教材なんだと思いました。
すべてのモノとの関わりに言葉が介在するわけではないですが、どの局面にことばが介在してくるのかを観察してみようかと思います。

6/23こども園の活動が言葉に結びついています

Sくん…最近は言語使用が目覚ましく驚いています。絵本を読んでいるときに、絵本が壊れていたので、「片方はどこ」と聞くと「ここ」と落ちてい本の片割れを指差す。「これ」と聞くと「うん」とうなづきます。また、こども園から外に出てすぐ、救急車のサイレンが聞こえた(おそらく明治通り)。救急車は見えない。すると「こっちから?」「あっちから?」と助詞つきの発語をします。
Tくん…
○絵本の絵をみて。「くらいくらい電気つけてちょうだい」と、正確な発音ではないが繰り返すことができます。
○外に出たら私がどこにも行かないように、私を引っ張り、ダンゴムシを探します。石が好きで大きな石を持ち歩いていました。
絵本は、言語使用の場面を提示するだけでなく、楽しい絵が何度も繰り返して読むことを可能にしています。言葉は場面と言語形式を耳からコピーし、あやふやながらくりかえします。(「くらいくらい電気つけてちょうだい」など)現実の場面では提示できない場面を提示できることから、言語形式の拡大に寄与しているように思います。

それから、朝の歌と振り付けは、挨拶や食事など、文化の導入として機能しているように思います。毎日繰り返される歌により、人間社会のルールを内在化していく。朝のうたと食事のうたでいうと、朝のほうが人工的(文化度?)が高い気がします。

Eちゃんの朝のうたの動作は、日に日に的確となっています。言葉がわかるというより、ことばと行動と習慣が繰り返しにより一致していくような感じ。物の名前ではないようなことばは、このような繰り返しにより、場面と同時に体感されるのかもしれません。