子どもは「やらかす」ことで、根っこが育つ【園長の保育雑談】

6月にも書きましたが、子育てをしていて大切なのは、子どもの存在を否定せずに、子どもの行動や言動を肯定的に受け止めることです。しかしこれは、口で言うほど簡単なことではありません。なぜなら実際に子どもが‶やらかすこと″は、大人からすると厄介で手間がかかることが多いからです。

例えば、子どもは2歳くらいの年齢になると「じぶんで!」という主張が激しくなります。この時期の子どもは、結果の出来栄えよりも自分でやったことに満足感をおぼえます。靴を左右逆に履いたとしても、そんなことはお構いなしに履けたことに満足しています。あるいは食事の場面で、「自分で運べる」と主張したので任せてみると、汁物を床にこぼしながら運んだりします。

こんな時、大人はどのように関わるべきなのでしょうか?「左右逆だよ」と教えて、靴を履き替えさせるのがよいのでしょうか。汁物をこぼした失敗をとがめて、今後からは大人が運ぶから!ときつく叱った方がよいのでしょうか。
答えにいく前に……実はこうした大人の日々の関わりは、どんな子どもに育ってほしいのかという大人の願いと無関係ではありません。

私たち大人はつい忘れがちですが、子どもの成長は「できない」ことが「できる」ようになっていく過程です。昨日まで歩けなかったのが今日は歩けるようになる、服のボタンをうまくかけることができなかったのが何とか穴に入れることができるようになってくる、帽子が自分でかぶれるようになる、トイレでおしっこができるようになる、スプーンを使って食べられるようになる……、挙げればきりがありません。でも「できるようになったばかり」ですから、スプーンを使っても床にはこぼしますし、ボタンのかけ違いも起こります。しかし子どもは、「できる」ようになっていく過程で、小さな成功体験を積み重ね、自分はお兄さん・お姉さんになっていると信じています。

そんな時に大人が「できない」部分に注目するのか、それとも「できた」部分に注目するのか、どちらがよいのか、ということを考えて関わってほしいのです。「できない」部分に注目し、そこを注意ばかりしていたら、自信がなく、大人の顔色をうかがう子どもになってしまうのではないでしょうか。これでは、新しいことに挑戦するという意欲が育たなくなり、根っこの力が育っていかないのです。

だから、たとえ靴が左右逆でも、自分で履けたことを認めてあげるべきでしょう。汁物を床にこぼしたとしても、わざとこぼしたわけではないので、そこまで運んできたことは尊重してあげるべきでしょう。「できた」ところに注目し、そこを認めた上で、「今度こぼしそうになったらどうしようか?」と一緒に考えてみる。そんな大人の姿勢こそが、子どもとの強い信頼関係を築き、さまざまなことにチャレンジする意欲を育むことにつながります。

子どもは「やらかす」ことで、根っこが育っていく。そんな風に受け止めて子育てができるとよいと思います。

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